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中小企業応援隊・南出塾 第6回
『良き相談相手はいますか?』

(2002年12月号)

 ここに来て、中小企業の情報化投資は一段と鈍化の傾向を強めています。国内はもとより、当てにしていた米国の景気が二番底状態では、経営者の投資マインドがますます萎縮してしまうのも当然かもしれません。
 しかし、多くの経営者は漠然とはしながらも、情報化が企業存続に不可欠であり、これを進化させなければならないという思いは持っています。とはいえ、先行きの見通しが立たないなかで、いざ具体的な投資額を目の当たりにすると「これだけの投資をして、いったいいくら合理化できるのか」と二の足を踏んでしまうのです。
 経営者の迷いを増幅させる第三者の存在も無視できません。中小企業では「社長の相談相手」として税理士をはじめ、中小企業診断士や技術士の先生方が顧問になっていますが、彼らがIT(情報技術)導入の「推進役」どころか「抵抗勢力」になってしまうことがあるのです。

古株の外部ブレーンのしがらみ

 専門分野には極めて強くても、世の中の変化がここまで激しくなってくると、昔ながらの古色蒼然とした知識や経験の「切り売り」だけでは対処できません。ましてやIT基盤の構築ともなれば、企業を取り巻く状況を洞察しながら全体最適を求めなければならないはずです。
 ところが、自ら企業経営に携わったことがなく、専門分野における「部分最適」を得意技にする人々に、大切な判断を委ねてしまう中小企業経営者は少なくないのです。
 S社は社員100人、約20年にわたって電子機器部品を製造してきました。ところが最近、得意先からの注文が多品種少量化しているうえ、リードタイムも日を追うごとに短くなり、とても人手だけでは対処できなくなってきたのです。そのため、日々の納期に追い回されて、原価すら判然としないありさまでした。
 偶然、同業者がIT導入で相当の効果を上げていることを耳にしたF社長は、公的支援機関から「ITコーディネータ」を紹介してもらい、リードタイム短縮を狙った情報システム構築の検討に入りました。

ITコーディネータとの板挟みに

 S社は創業時から、生産技術を専門にする技術士と顧問契約を結んでいました。前もって何の相談も受けなかった顧問技術士は、心中穏かであろうはずがありません。ITコーディネータのやることなすことに、ことごとく反対し始めたのです。その間に挟まったF社長ときたら、まるで「廊下トンビ」さながらに、あっちに行ったと思いきや突然向きを変え、こっちに擦り寄ってくるありさまでした。
 それでもITコーディネータは奮闘し、「S社の情報化提案書」をまとめ上げて報告会を開くところまでこぎ着けたのです。
 その提案書に対して、仏頂面した顧問技術士から激しい攻撃の火の手が上がりました。
 「あんたはコンピュータを使わなければリードタイムが短縮できないとでも言うのか!」。
 「いや、システム化したほうがより効果的であると申し上げているのです!」。
 延々と続く2人のやり取りを聞いていたF社長は、ただおろおろするばかりで、何の結論も出せずに報告会は終わってしまいました。
 後日談になりますが、ITコーディネータ氏はわずかな報酬をもらっただけでお払い箱になったそうです。時期が時期だけに、迷えるF社長は長年連れ添った顧問技術士の「IT投資無駄金論」になびいたと言えるかもしれません。

厳しいからこそ縮み志向を脱しよう

 それにしても、F社長が100人の社員を使って20年も経営者をやってきたとは信じがたいことです。S社ではいったい、誰が経営者として意思決定してきたのでしょうか。
 確かに、人材不足といわれる中小企業では「外部ブレーン」の意見具申は大切にしなければなりません。しかし、自社の行く末を見定めながら最終的な決定を下し、最後まで責任を持つのが経営者の定めです。
 口はばったいことを言いますが、今でも中小企業経営者のなかには「既存の枠組みに固執する習性」が見受けられます。つまり、世の中が厳しくなればなるほど、現状を守ろうとする性向を強めていくのです。「できるだけ安全路線をいきたい」という思いは理解できるとしても、その「縮み思考」が将来への展望や夢まで奪ってしまうのであれば、あまりに惨めではないでしょうか。
 乱暴かもしれませんが、将来展望が開けない現状維持よりも、たとえ目に見えない夢であろうとも、その具現化に向けて戦っていくほうがよりダイナミックな生き方ができるのではないかと思うのです。
 どうでしょう、どうせここまで来てしまったのだからクヨクヨするのをやめにして、思い切り「居直り精神」を発揮してみませんか。

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