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中小企業応援隊・南出塾 第3回
『経営者は闘争心を忘れるな』

(2002年9月号)

 「自己変革」という言葉がいとも簡単に飛び交っている昨今ですが、その意味を突き詰めてお考えになったことはありますか。
 つい1カ月ほど前、若手経営者向けのセミナーを傍聴して、「こりゃいったい、どうなっているんだ!」という場面に出くわしました。セミナーの講師が、「若手経営者の意識変革調査」の分析結果を発表したときのことです。
 調査の内容は40年ほど前、管理者教育用として一世を風靡(ふうび)した「マグレガーのXY理論」と似たものでした。価値観や行動規範に関する設問に対する回答を基に、対象者を6つのグループに分類します。各自の意識・行動パターンを認識したうえで、目標設定や教育・研修に役立てるという方法です。
 驚くなかれ! 「和をもって尊しとなす」という私たちの歴史は、若手経営者のなかにも脈々と生き続けていることが証明されたのです。
 調査結果によると、若手経営者の多くが「皆と仲良く」「気配りと細かい配慮」「面倒見の良さ」などといった点を重視していました。圧倒的に人間関係指向であり、40年前の傾向と全くと言っていいほど変わりません。
 つまり、「日本の経営者」は何十年もの間、自己変革の必要性を叫びながら、実は潜在意識も行動様式も変化しなかったのです。
 米国流のドライな経営術をよく知る新進気鋭の若き経営者たちでさえ、「仲間外れ」や「出る杭は打たれる」ことを恐れているのでしょうか。それとも、「変革による摩擦」よりも、「流れに逆らわない」生き方が私たち日本人の本質なのでしょうか。

自己変革なくしてBPRなし

 鋼鈑加工の中堅であるB社のF社長は、まさに「何も変えたくない」という典型でした。
 私はB社に大きく掲げられたスローガンを見て吹き出したことがあります。「自己変革なくして企業の成長なし」――。どこかの国の首相が唱えている空念仏と全く同じとは恐れ入ったものです。
 B社の基幹となる情報システムの開発に当たり、F社長は当初、極めて先進的な企業改革の必要性をシステム会社に訴えたそうです。ところが、いざ実施しようとすると、スローガンとは裏腹に「取引先に迷惑をかけるようなシステム構築は避けてくれ」と言い出す始末。
 システム会社もなんのための改革か分からなくなり、結局、今までの手作業をシステムに置き換えただけで終わったのです。それでもF氏は、「情報システムは足し算と引き算ができて、人手が減ればそれで十分」と満足げな面持ちだったようです。
 F氏にとっての変革とはいったい何だったのでしょう。手書き作業をコンピュータに置き換えることだったのでしょうか。子供だましではあるまいし、いくらなんでもそんなバカなことがあるのかと耳を疑いたくなります。
 自己変革といえば、サッカーW杯における「若き日本チーム」でしょうか。中田英をリーダーに、決勝トーナメントで敗退したものの見事予選を勝ち抜き、世界のベスト16になりました。国際舞台では力を発揮できなかった前回の日本チームとは、大きな違いを感じました。

韓国サッカーは何を教えたか

 しかし、それ以上に強烈なショックを受けたのは、お隣りの韓国チームです。優勝候補のポルトガルを破り、イタリアとの延長戦で凄まじい死闘を繰り広げ、さらにスペインをPK戦の末に退けて、ついにベスト4に勝ち進んだのです。「この差は何だろう」と考えた日本人は少なくなかったと思います。
 日本チームのほうが総じて技術的に勝っていたし、反則の少なさから見ても貴公子然としていました。しかし、韓国のストライカーたちが目をつり上げ、ゴールに向けて突進する執念にはとても及ばなかったのです。
 1997年末から3年余り、韓国はバブル期の不良債権を処理するために国際通貨基金(IMF)から突きつけられた厳しい「構造変革要求」に対し、多くの犠牲を払いながら民・官を挙げて立ち向かいました。そして、わずかな間に瀕死の国家と産業を蘇えらせ、IT(情報技術)関連産業などの新しいビジネスに衣替えしていったのです。
 韓国の中小企業経営者たちは口をそろえて、「俺は変わったのだ!」と宣言しました。韓国サッカーと同じく、どんな障害があろうとも「勝利という目標」に向けて突き進んでいこうとする激しい闘争心を、韓国の経営者も持っていました。
 私たちはいつの間にか、「燃えたぎる闘争心」を忘れてしまったのでしょうか。 「そのうちになんとかなるから、無理に変えなくても…」という日本人の拭いようのない歴史的体質をいち早く断ち切らないと、取り返しがつかないことになるのではないでしょうか。

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