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中小企業応援隊・南出塾 第1回
『中小企業の世代交代を阻むな』

(2002年7月号)

 先月、関西にある某中小企業団体の「経営者向けITセミナー」に講師として招かれ、懇親パーティーでも経営者の方々と親しく談笑させていただく機会を得ました。宴たけなわのころ、偶然にも2代目経営者数人から同じ「悩みごと相談」を持ちかけられたのです。
 「オヤジはIT(情報技術)投資の話をすると、たちまち不機嫌な顔になり、まともに取り合おうとはしません」。
 「当社の会長もIT投資はばくちと同じだと言うのです。その揚げ句、『会社が左前になっているというのに、そんな道楽ごとに金を使えると思っているのか!』と怒鳴りつけられました」――。

世代交代の停滞が情報化を阻害

 一瞬、「なんとも情けない2世経営者だなぁ」と思ってはみたものの、最近、こうしたケースを本当によく耳にします。IT投資を巡る創業者と事業継承者の確執です。
 「中小企業の情報化が進まないのは、ITに対する経営者の知識、理解が足りないからだ」という見方が支配的です。しかし、本当はそれだけではありません。情報化に積極的な若い経営者予備軍への世代交代を、様々なしがらみが阻んでいることこそ、中小企業の情報化を遅らせているのです。
 ご存じの通り、多くの中小企業は資金調達で大変な苦労を強いられています。昨今、1度でも赤字決算を出そうものなら、金融機関は担保の追加を要求してきます。これに応じられないと見るや、貸し渋りどころか貸し剥がしの挙に出ます。
 これでは経営者のマインドが守りに入るのは当たり前です。そのうえ、金融機関から「キャッシュフローが最優先」と言われれば、つい目先にこだわりIT投資どころではなくなるのが人情です。
 まして、創業者は現実主義者です。先の見えない時代に「夢物語にしか見えないIT投資」を進めようとする若者が、甘く見えて仕方がないのでしょう。

ずしりと重い債務保証責任

 中小企業の経営者たちは次代にバトンタッチしたくても、保有している紙切れ同然の未公開株を時価評価され、法外な税金を課されます。借金をして税金を払うのですから、事業継承どころではありません。企業そのものが存亡の危機にさらされてしまうのです。
 さらに、後継者に事業を継承し、会長や相談役に退いたとしても、ずっしり背負い込んだ重荷は現役当時と全く変わりません。中小企業経営者として「金融機関に対する債務保証責任」からは、死ぬまで逃れられない現実があるのです。
 これでは、若い世代が望むIT化に、気軽にゴーサインを出せなくても仕方ありません。
 この状況に対して、多くの評論家やメディアは「企業にしがみつき、新しいことに挑戦しようとする若者の芽を摘む頑迷な駄目経営者」というらく印を押したがるようです。個々人の持っている経験や能力にかかわりなく、「ビジネスの世界から早々に退場すべき」という風潮が強くなっていることに激しい憤りさえ覚えます。
 それにしても、あまりに多くの課題を抱えている中小企業について、政治家や役人たちは何を考えているのでしょうか。
 一見、IT化支援に軸足を置いているかのようにふるまっていますが、依然として政官癒着の本ネタである公共投資に税金の大半を投じています。「菜っぱの肥やし」ではあるまいし、掛け声だけの「構造改革」で終始している現状には愛想も尽きてしまうというものです。
 先日お会いしたある証券会社の新進気鋭の社長は、「クーデターでも起こさない限り、この国は変化しない!」と怒っていました。それでも、この国を変えるには少々生ぬるいかもしれません。

変化は自ら起こすもの

 ようやく、この閉そく状況に風穴を開けようとする運動が起こり始めました。
 中小企業家同友会が全国に呼びかけ、正当な事業評価をせずに物的担保がなければ資金を貸さないという金融システムを変えるべく、「地域と中小企業の金融環境を活性化させる法律(金融アセスメント法)」を法制化する一大キャンペーンを展開しています。すでに、70万人の経営者から署名を集めました。
 多くの地方自治体でも、この法律の制定を求めて国会への意見書を採択したそうです。
 さらに中小企業にとって事業継承を阻ぶあしき課税システムも、放置してはおけないでしょう。次世代にバトンタッチするためにも「アンシャンレジュームの権化」ともいうべき税制を直ちに、それも徹底して見直すべきです。
 中小企業経営者の皆さん、もはや「声なき声」では何も変えられません。自らが激しく直接行動を起こさなければ、「21世紀は中小企業の時代」は、単なるスローガンに終わってしまうことを認識していただきたいのです。

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